
10月29日(木)夜11時6分から放送されるテレビ東京「カンブリア宮殿」は、通常60分を90分に拡大したスペシャル版です。
ゲストは富士フイルムホールディングスの後藤禎一(ごとう ていいち)社長・CEO。番組公式の予告編では、後藤社長がインドを訪問し、現地の要人と向き合う場面が映されています。
- 「この人、誰だろう?」
- 「インド人だよね?」
- 「要人っぽいけど、何かの大臣?」
- 「現地の社長では?」
予告を見た人の素朴な疑問は、たぶんそこに集まっているはずです。
先に答えを書いておきます。この人物はインドのアシュウィニ・ヴァイシュナウ大臣。鉄道・情報・放送・電子・ITを束ねる、インド半導体政策のど真ん中にいる人物です。
そして後藤社長のインド訪問は、観光でも表敬訪問だけでもなく、約130億円の工場をつくるという具体的な話が背景にありました。
順番に見ていきましょう。
「カンブリア宮殿」予告の後藤禎一と会うあのインド人は誰?

後藤禎一と握手を交わすヴァイシュナウ大臣:テレ東公式サイトより
今回の放送は、フィルム事業の縮小という「本業消失」の危機から、医療・化粧品・複合機・半導体まで事業を広げた富士フイルムの変貌を追う内容です。
番組ページによると、売上は3兆3000億円を超えて過去最高を更新し、チェキだけで2000億円を稼ぐというもの凄い状況ですが、それ以外に3兆円以上も売り上げがあるという…
写真フィルムの会社が、いまや半導体材料の会社でもあるわけですね。その成長ストーリーの一片として登場するのが、インドの場面です。
後藤社長が握手していたのが、冒頭で明かしたヴァイシュナウ大臣。日本のテレビ番組では馴染みが薄いので、「誰?」となるのも無理はありません。
僕も名前を見た瞬間、一瞬止まりました。
インド人の正体はアシュウィニ・ヴァイシュナウ大臣

インドのアシュウィニ・ヴァイシュナウ大臣:VOIより
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | アシュウィニ・ヴァイシュナウ(Ashwini Vaishnaw) |
| 肩書き | インド 鉄道・情報・放送・電子・IT大臣 |
| 所管 | 鉄道、情報・放送、電子・IT、インド半導体ミッション |
名前の読み方と肩書きは?
カタカナでは「アシュウィニ・ヴァイシュナウ」。日本語の報道では「ヴァイシュナウ大臣」と略されることが多いですね。
肩書きは鉄道・情報・放送・電子・IT大臣で、ひとりで4分野を抱えています。鉄道とITと放送が同じ人の机の上にある、というのがまず驚きです。
しかも彼は、インド政府が進める半導体産業振興策「インド半導体ミッション」を所管する立場。日本でいえば、国土交通省と総務省と経済産業省の一部を合わせたような役割を、一人で担っているイメージでしょうか。
なんだかものすごいマルチで優秀な人なんだろうな、という印象ですよね。
「インド人だよね?」——もちろんインドの重鎮
予告を見た人の「インド人だよね?」という感覚は、そのとおりです。
インド連邦政府の閣僚で、モディ政権の中核を担う一人。日本との関係も深く、これまでも訪日して高速鉄道事業やデジタル分野で日本側と会談を重ねてきました。
そう言えば来年ですね、2027年には日本の新幹線技術を輸出したインドの高速鉄道が一部区間で運行を開始される予定ですよね。こちらも今後が楽しみです。
そんなこんなで、番組に出てくる「謎のインド人」は、街角でたまたま出会った人ではなく(笑)、国家の産業政策を動かす側の人。後藤社長が会う相手としては、かなり筋の通った相手なんです。
後藤禎一が会ったヴァイシュナウ氏は「何の大臣?」が一番の謎

高市内閣の小野田経済安全保障担当大臣も今年5月にインドでヴァイシュナウ大臣及び現地日系企業関係者と面会:内閣府公式サイトより
ここが一番引っかかるポイントでしょう。鉄道?情報?電子?IT?——ひとつに絞れないから、検索しても正解にたどり着きにくいのだと思います。
鉄道・情報放送・電子ITを一手に担う大物
ヴァイシュナウ大臣の担当は、鉄道、情報・放送、電子・IT。インドの都市間を結ぶ高速鉄道プロジェクトも、テレビや通信のルールづくりも、IT産業の振興も、同じ人物の管轄です。
これだけ幅広い分野を一人で見ている閣僚は、世界的にも珍しいのではないでしょうか。
じつは半導体政策のキーパーソンだった
そして今回の本題はここです。インドは半導体のほぼ全量を輸入に頼っており、国を挙げて自国生産に舵を切りました。その旗振り役がヴァイシュナウ大臣。
2026年9月にニューデリーで開かれた「SEMICON India 2026」では、120億ドル規模の投資表明が集まったと報じられています。
富士フイルムとタタ・エレクトロニクスの提携も、この流れの中の一手。大臣にとっては「自国の半導体エコシステムに、材料の要となる日本企業が入ってくれる」という話だったわけですね。
なぜ後藤禎一はインドまで行ったのか?

インドのモディ首相と面会する後藤禎一:富士フィルム公式FaceBookより
答えはシンプルで、インドが「次の生産拠点」になり得るからです。後藤社長はメディアの取材に対し、将来的にはインドから東南アジアや中東・アフリカへの輸出も視野に入れたい趣旨を語っています。
国内市場だけでなく、周辺国への供給ハブとして見ているんですね。
モディ首相と面談していた
2026年9月のインド訪問で、後藤社長はモディ首相と面談し、半導体産業について意見を交わしました。
さらにニューデリーで開催中のSEMICON India 2026を視察し、現地従業員とも言葉を交わしています。首脳と現場、両方に会っているのが印象的でした。
実は後藤禎一さんは、富士フィルム一筋の生え抜き社員から社長になった人物。つまり僕や大多数(と思いますが…)のサラリーマン同様、新卒で入社した普通の人。
決して「プロ経営者」や起業・独立・M&Aを繰り返してきた「スゴ腕起業家」とかではないんですよね。新卒で入社して頑張って働いていたら、なんとインドの首相と面談してる…(笑)凄いことですよね!
今は社長という立場ですから、その部分だけを取り上げれば「ふぅ〜ん」かもしれませんが、ここに至る経緯を想像すると、夢があるというか元気をもらえると言うか。といかくスゴイです。
グジャラート州ドレラに130億円の工場を作る
で、本丸はここです。富士フイルムは2026年9月17日、タタ・エレクトロニクスと基本合意書(MOU)を締結。
グジャラート州ドレラ特別投資地域に、約80億ルピー(約130億円)を段階的に投じる半導体材料工場を新設すると発表しました。富士フイルムとしてインド初の材料工場になります。
隣ではタタ・エレクトロニクスが、総額約9,100億ルピー(約1兆5000億円)を投じる300mm(12インチ)の前工程工場を建設中なんだそうです。
28〜110ナノメートルという、いわゆる成熟ノード帯のチップを作る、インド初の商用工場です。材料を作る場所と、材料を使う場所が隣り合う——
「地産・地消」の形を最初に整えたのが富士フイルムだった、というわけですね。
後藤禎一とヴァイシュナウ大臣が同席したのは「あのセレモニー」

「SEMICON India 2026」に出展した富士フィルムのブース:富士フィルム公式サイトより
予告編で大臣と後藤社長が握手をする場面は、この9月のインド訪問中、SEMICON India 2026の会場で撮影されたものと思われます。
タタ・エレクトロニクスはこの場で、富士フイルムを含む複数のパートナーとの提携を一気に発表しました。大臣は、その発表を後押しする立場だったということですね。
タタ・エレクトロニクスとの基本合意書
合意の柱は、タタのドレラ工場の要求に合わせた先端半導体材料の開発・供給。
フォトレジスト、CMPスラリー、高純度プロセスケミカルなど、前工程から後工程までをワンストップで揃える富士フイルムの強みが買われた形です。
インド初の半導体工場を支える立場に
インド初の商用ファブを、材料の側から支える。これは地味ですが、切れられない関係です。材料が止まれば工場も止まるので、サプライチェーンの要に食い込むことになります。
会社員として現場を見てきた身からすると、こういう「縁の下ポジション」を先に取る判断は、なかなか勇気がいると思います。
工場を作るだけじゃなく技術まで渡す
もうひとつ見逃せないのが、技術支援の中身です。
富士フイルムは工場を作るだけでなく、インドの化学メーカーに対して技術、品質保証、製造プロセスのノウハウを提供し、高純度薬液の現地生産を後押しするとしています。
自分で全部やるのではなく、現地の産業を立ち上げる側に回る。現地の人々が自立してして稼げる体質を作る。日本が昔からアジアの国々に対してとってきた姿勢です。
時間はかかるかもしれませんが、長く信頼され、Win-Wiinとなれるやり方ですよね。
世間の反応やSNSの声

富士フィルム社長・後藤禎一:Bloombergより
予告編が公開されると、Xでは
- 「後藤社長の隣のインド人は誰?」
- 「大臣なの?」
- 「現地の社長?」
といった反応が見られます。富士フイルムの公式Xも番組出演を告知しており、いつもの製品ネタとは違う反応が集まっているようです。
一方で、半導体に詳しい層からは
- 「ここで材料か」
という声も。
チェキや写ルンですの話題で盛り上がったあとに、インドの工場の話が来る落差が、今回の放送の面白さなのだと思います。
まとめ:後藤禎一と会った予告のあの人物は「インドの半導体大臣」でした
最後に、この記事の要点を整理します。
- 予告に出ていたインド人は、アシュウィニ・ヴァイシュナウ大臣
- 肩書きは鉄道・情報・放送・電子・IT大臣。インド半導体政策の中心人物
- 後藤社長は2026年9月にインドを訪れ、モディ首相と面談
- タタ・エレクトロニクスとMOUを結び、ドレラに約130億円の材料工場を建設
- 工場だけでなく、現地化学メーカーへ技術とノウハウも提供する
写真フィルムが消えていく時代に、会社を畳まずに別の技術へ転換してきた富士フイルム。その延長線上に、インドの砂漠地帯に建つ工場があるわけです。
派手な発表の裏で、地味な材料の話をコツコツ積み上げている。僕はそういう話に、どうしても弱いんですよね。
今夜の放送では、その現場がどこまで映るのか。
予告のあの大臣の表情とあわせて、見てみたいと思います。

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